仙台市では最高気温が30度以上となる真夏日が60日近くもありました。酷暑が川の生きものにどんな影響を与えたかを、川の生態系に詳しい宮城教育大学の棟方先生に伺いました。
*2023年12月発行のカワラバンのかわら版への寄稿を転載しました。
近年、地球全体が温暖化に向かっていると言われていますが、2023年はこの数年の中でも特に暑さが厳しく、日本の各地で過去高気温が記録されたり、猛暑日の連続記録が更新されたりしています。では、こうした暑さは水中で暮らす魚などにはどのような影響を及ぼしたでしょうか。(宮城教育大学准教授棟方有宗氏)
仙台の川―これまでの猛暑被害
さて、その前に仙台のシンボル河川である広瀬川でこれまでに見られた猛暑の影響について、簡単に振り返ってみます。
例えば2018年7月上旬、広瀬川ではサケの仲間であるサクラマスが中流域の郡山堰という堰堤の下流で大量に(約2000尾)死んだことが報告されています。また大量死はこの年のみならず、前後の数年間にも何度か繰り返されてきました。こういう時にはほぼ、その場所の水温が25度以上とかなりの高温になったことがわかっています。
では、2023年の夏はこうした大量死が多発したかというと、じつはそのような深刻な被害はほとんど見られませんでした。なぜそうだったかというと、仙台で猛暑日が続いた間、川ではぎりぎり、流れる水の量(流量)が一定以上に保たれていたからだと考えられます。つまり、猛暑になれば必ず水温が上がるかというと(確かにその傾向はありますが)、そうではなく、実際には猛暑の時に同時に川の水位や流速の低下が起こることで水温の急上昇が起こると考えられます。その点で言えば、結果的に今年は不幸中の幸いだった、と言えそうです。ただし、今後こうした猛暑の年に川の水位低下が合わさると水温が急激に上昇し、最悪の場合には過去に前例のない川魚の大量死が起こる可能性も十分に考えられます。猛暑自体は今のところ人間の能力ではコントロールできませんので、私達市民としては次に猛暑となった時にも川の水位が減らないように、日頃からの節水や、ダムの貯水率の変動に気を配る習慣をもつことが重要となります。
仙台のシロサケが減っている このように、幸いにも今年、仙台の川で深刻な事態が起こることはありませんでした。しかしながらここ数年、仙台の海ではサケ(シロサケ)の壊滅的な減少が起こり、大きな問題となりつつあります。こちらは、上述した夏の猛暑のピーク時の影響、というよりはここ数年間の温暖化によって春から秋の間の三陸沿岸の海水温が慢性的に高くなってしまうことが原因となっています。(図1)そのような状況下ではサケの稚魚が死んでしまったり、仙台の川を母川とするサケ親魚の回帰尾数が減ってしまうと考えられます。残念ながら、このような海の高水温に対しても、我々が直ちに取り組めるような処方箋はありません。ですので、今できることは来たる将来、海の温暖化が収まってまたサケの親魚が戻ってきた際にも産卵ができるように川の環境をしっかりと整えておくことだと考えています。いずれにせよ、我々の日頃の心がけが重要な鍵ということになります。
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